カニラン村診療所が7年ぶりに診療開始
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、イラクのニナワ州バルダラッシュ郡のカニラン村で、住民への保健衛生向上支援のため、診療所の修復事業を行いました。修復事業が完了し、保健局から3名のスタッフ(医療助手、薬剤師、事務員)が派遣され、9月6日に診療が開始しました。
カニラン村は、イラク中央政府とクルド自治政府の境界線上にあり、現在も行政管轄が曖昧なため、村の復興事業が他の地域に比べて遅れています。2003年まで運営されていた診療所がありましたが、イラク戦争以降は政府からスタッフが派遣されずにいたために、建物は放置状態が続き、使われなくなっていました。
その一方で、カニラン村はモスルとアルビルの間に位置しており治安が比較的安定しています。そのために、近年では治安の不安定なモスルから避難先としてカニラン村にやってくる家族も多く、103家族が国内避難民として登録されており、村には現在、526家族、約4800人が暮らしています。
このように人口が増加した村内では、住民からの診療所開設など保健衛生の向上に関する要望は高くなっていました。PWJは保健局との合意を得て、老朽化した診療所の修復と水回りの工事を行い、診療所として利用できる状態に戻す事業を行いました。
医療助手である所長(写真左)とPWJスタッフのカワ(写真右)。病院の様子についての聞き取り調査。
(C)PWJ/Masatoshi KAKUMEN
村に住んでいるノーラさんは看護師の資格を持っていますが、病院に通う手段がないため働きに出ることができませんでした。現在は、ボランティアとして診療所で働き始めています。
「この村には診療所がなかったため、風邪の診察や簡単な怪我の治療を受けるために、8kmほど離れたバルダラッシュの病院に行かなければなりませんでした。でも村の多くの家族は車をもっていないし、タクシーもなかなか来ないので病気になっても簡単に通うことができませんでした。また、多くの家族は、定期的な収入がないので交通費を支払うことも大変です。
今回、村に診療所ができたことで、より簡単に診察が受けられ、薬がもらえるので以前より負担が軽くなったように感じています。今はボランティアとして働いていますが、近い将来は正式に看護師として登録されると思います。診療所で働きながら、薬剤師の勉強もして村のために働きたいです」と、話してくれました。
村に住んでいるボランティア看護士のノーラさん(写真右)。
(C)PWJ/Masatoshi KAKUMEN
PWJが修復を行った診療所が、ノーラさんのような地元の人たちの協力によって今後も最大限に活用されることを願ってやみません。