【イラク】職業訓練コース受講者の声(1)
「学びこそが自らの置かれた状況を改善するために不可欠です」
こう話してくれたのは、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)がイラク北部で実施する職業訓練コースの受講者S.H.Kさんです。PWJは2020年9月よりイラク北部ドホーク州シャリヤ地区のシャリヤ国内避難民キャンプ内外の国内避難民とホストコミュニティの女性および若者を対象に、生計能力の向上やコミュニティ連携に貢献し得る人材育成のため、住居修繕技術(電気・配管)、美容・整髪技術、リーダーシップの職業訓練コースを実施しています。今回から4回にわたり、職業訓練コースの受講者の声をお届けします。第1弾となる今回は、住居修繕技術の職業訓練コースに参加したS.H.Kさんの声です。
職業訓練コース(住居修繕技術)に参加する受講者S.H.K.さん
S.H.K.さん(21歳)は現在、妻と子ども1人、そして彼の父親の家族と一緒にドホーク州のシャリヤ町で1つのテントに7人で暮らしています。S.H.K.さん家族は以前イラク北部ニナワ州シンジャールで農業を営んでいました。7年前に「イスラム国」がシンジャールにある彼らの村を占拠したとき、すべてを捨てて家族と一緒に逃げました。シンジャールからは危険な道を歩かなければなりませんでした。シンジャール山にたどり着き、18日間、食料も飲料水もなく、生き延びるためのわずかな物資だけで過ごしました。その後、何日もかけて場所を変えながら歩き、現在のシャリヤ町にたどり着き、ようやく安全を手に入れましたが、逃げるときに現金を持ってくることができず、服も家具も仕事も何もない状態でした。
S.H.K.さんは家族の状況を改善する機会を得たいと考えていました。もちろん、今は都会にいて土地を所有していないため、農夫に戻ることはできません。そこで、PWJが職業訓練コースの候補者を募集していたとき、家族のためにお金を稼ぐのに役立つ職業技術を得るため、電気や配管の住居修繕技術を習得できるコースに登録しました。S.H.K.さんはとても意欲的で、技術を習得しようという強い意志を持った受講者の一人で、習得も非常に早いものでした。習得した技術を実際に使って就労経験を積むインターンシップ期間中もS.H.K.さんは積極的に活動すると同時に、S.H.K.さんをインターンシップ期間受け入れてくれた人を通じて、地元の建設会社のオーナーたちと積極的にコミュニケーションを取り、職業訓練コース修了後の収入・就業機会につなげられるように自ら働きかけも行いました。
職業訓練コース(住居修繕技術)で実習を受ける受講者
「学びこそが自らの置かれた状況を改善するために不可欠」という信念を持ち続けてきたS.H.K.さん。この信念と積極的な努力が実を結び、職業訓練コース修了後、地元の建設会社で日雇い労働者として働く機会を得ることができました。S.H.K.さんは、職業訓練コースで得た知識と技術を生かし、日雇い労働者としての仕事にやりがいを感じています。
強い意思と努力を持って生きる人ひどに刺激を受けながら、PWJは職業訓練活動を通じ、支援を必要としている人びとをこれからも支えていきます。引き続き、みなさまからの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
※本事業は、外務省の日本NGO連携無償資金協力からの助成金やみなさまのご寄付により実施しています。