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私たちの活動

「被害を繰り返すまい」-陸前高田市広田町の震災記録誌が完成

ピースウィンズ・ジャパンが、宮城県陸前高田市広田町の自主防災会とともに制作に取り組んできた震災記録誌「広田の未来(あした)に光あれ-平成23年3月11日 平成三陸大津波 広田町の記録」が完成し、同町内全戸や関係先に配布されました。震災当日から避難生活の間の地域の状況や取り組みが、多くの体験談などによって詳しく紹介されているほか、「同様の被害を繰り返すまい」という強い思いのもと、体験談や避難行動に関するアンケートに先だって「津波避難・四原則」の章が設けられています。
震災記録誌「広田の未来(あした)に光あれ-平成23年3月11日 平成三陸大津波 広田町の記録」仮設住宅に入居している広田町民への記録誌配布 ピースウィンズ・ジャパン
写真左:完成した震災記録誌 写真右:仮設住宅に入居している広田町民への記録誌配布
震災後、同町内では、各地区の自主防災会が中心となり、地域社会が強く支え合う形で避難生活や復旧が進められました。2012年10月、同町自主防災会とピースウィンズが合同で開催した防災対策の勉強会がきっかけとなり、「こうした震災後の取り組みを将来に残さなければ」と、記録誌の取り組みが始まりました。ピースウィンズとしても、震災後の経験や防災の教訓を共有することは、コミュニティの強化・再生につながると考え、記録誌づくりを支援することになりました。
それから約1年、A4版、153ページの記録誌が完成しました。津波の記録写真や36人の体験談や対談記録を収録し、文章が苦手な人については、聞き取りのうえ、ボランティアたちの手で書き起こす作業を行いました。9月26日から各戸に配布し、10月3日には同町自主防災会の黄川田富八会長(広田地区コミュニティ推進協議会町)から戸羽太市長に直接、手渡したほか、隣接の大船渡市、岩手県立図書館などにも届けました。
戸羽市長(右)に記録誌を贈呈する黄川田会長戸羽市長(右)に説明する角免昌俊・ピースウィンズ東北事業代表(左)と黄川田会長
写真左:戸羽市長(右)に記録誌を贈呈する黄川田会長
写真右:戸羽市長(右)に説明する角免昌俊・ピースウィンズ東北事業代表(左)と黄川田会長
体験談では多くの町民が、最初の津波警報で予想される津波の高さが3メートルと伝えられたことにふれました。同町には高さ6メートル以上の防潮堤があったこともあり、何人もが「『津波は来ないかな』と思った」「3メートルの津波がどうして堤防を越えたか理解できなかった」などと書きました。過去の教訓から「地震が来たら津波が来る」と思って行動した人や、実際の津波を目で見ていち早くさらに高い場所へ避難した人が難を逃れました。身内を亡くされた方、間一髪で生きのびた方の生々しい体験も収録されています。
地震・津波発生時の様子とともに詳しく記述されているのが、避難生活での助け合い。自主防災会による総括的な取り組みのほか、女性会を中心とした炊き出しや各戸にあった食物などの提供、冷凍庫や発電機などの持ち寄り、買い出しなどの活動が具体的に紹介され、避難所となった学校の校長や寺の住職、診療所の医師の体験談も盛り込まれています。
ピースウィンズによる広田町への灯油支援(2011年3月20日)根岬地区での物資配布の様子(2011年4月4日)
写真左:ピースウィンズによる広田町への灯油支援(2011年3月20日、記録誌P131掲載)
写真右:広田町根岬地区での物資配布(2011年4月4日、記録誌P137掲載、伊藤安治さん提供)
避難行動についてのアンケートは、町内全世帯1,106世帯を対象に実施。75%にあたる834世帯から回答が得られ、人と防災未来センターの坂本真由美主任研究員が分析にあたりました。子どもから高齢者まで、家族全員の震災直後の行動では、10代では80%が避難したのに対し、70代以上では避難した人は40%前後にとどまり、年齢が上がるほど避難しなかったという課題が浮かび上がりました。
こうしたことから、今回の記録誌では、「刊行のことば」に続く第Ⅱ章を「津波避難・四原則」とし、1933年(昭和8年)3月3日の昭和三陸津波の後に町内8か所に建立された津波記念碑の碑文を紹介する形で、教訓を強調しています。
その四原則とは
・地震があったら津波の用心
・それ津波機敏に高所へ
・低いところに住家を建てるな
・津波と聞いたら欲捨て逃げる

震災記録製作委員会事務局の長野昭文さんは「俺自身はまだ完ぺきなもんじゃないと思ってる」といいます。「まだ傷も癒えてない人もいる。語れないという人もいる。当時の写真、見るのも辛いという人もいる。写真を持っているのに、出せなかった人もいる」。そうではあっても、今回の記録誌について、「この地域は、明治三陸津波(1896年)、昭和三陸津波で大きな被害を受けながら、世代交代のたびに教訓は忘れられ、被害を出してきた。今度こそ、教訓を次の世代に伝えなければならない。記録誌を体験を子どもや孫に伝えるために使ってほしい」と、その意義を話しています。
※アンケートの集計や聞取り体験談のインタビュー、テープお越しの作業にご協力頂きました、広田町で活動する特定非営利活動法人SET、立教大学ボランティア、ピースウィンズ・ジャパンボランティア、東京藝術大学大学院生の皆様に深く御礼申し上げます。
※本事業は、2012年12月〜2013年9月まで、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が米国NPOマーシー・コー(Mercy Coups)の助成金と皆さまからのご寄付により実施しました。

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