【ミャンマー】「母子支援ボランティア」を育成するプロジェクトを開始しました
ピースウィンズ・ジャパンは、タイの2か所でミャンマー避難民への緊急人道支援を行っています。ひとつはターク県で、もうひとつはカンチャナブリ県サンクラブリ郡です。
サンクラブリ郡は、首都バンコクから北西に約300キロ、ミャンマーのカレン州、モン州と国境を接しています。正確な統計はありませんが、提携団体からの情報だと、サンクラブリ郡の人口数は約5万人、うち約3万人がミャンマー人だと言われています。
もともとこの地域にはタイの経営者によるゴム農園が多いことから、ミャンマーからの移民労働者が多くいました。加えてモン州、カレン州はミャンマー政府軍と少数民族武装勢力との間で紛争が続いてきた地域のため避難民も多くいましたが、2021年のクーデター以降、その数はさらに増加しています。このため、ピースウィンズはサンクラブリ郡でも支援活動ができないか、調査を進めてきました。
村で暮らすミャンマーの人から話を聞くと、長い人では50年ほど前にミャンマーから避難してきていました。激しい戦いがあった時に逃げて、帰国するには不安な状況が続き、そのままサンクラブリに住むことになったと言います。いまでは、その年代の人たちの子どもや孫の世代がここで育っています。
一度は希望の兆しが見えた2010年代中頃、ミャンマー国内で少数民族とミャンマー政府との和解が進み、帰還が促されましたが、もといた村に帰った人は少数だったそうです。というのも、住む家は再建されたものの電気は通っておらず、仕事もなく、生活の見込みが立たなかったからです。そして、2021年2月のクーデターによって、さらに避難民は増え、ミャンマーへ帰れる見通しはまた遠ざかりました。
私たちの調査の結果、こうした事情からタイ側で暮らす人々の中でも、特に母親たちが厳しい状況に追い込まれていることが分かりました。彼女たちは、避難先の村で身を隠して避難生活をしながら子どもたちを育てています。多くの女性は頼れる人もなく集落で孤立しており、育児や病気に関する知識がなく、タイ語ができないために生活に必要な情報が得られない苦境にあります。避難先で生まれた子どもは出産記録がないために無国籍のままで、医療受診もできない、学校に通えない、といった課題も明らかになりました。
このような状況を改善するため、ピースウィンズはタイの提携団体とともに、「母子支援ボランティア」を育成するプロジェクトを開始しました。ワークショップや相談会を開き、出生届や入学といった行政手続きの方法、予防接種を受ける時期やその方法などを具体的に分かりやすく伝えています。
母子支援ボランティアが、母親など保護者の相談に乗ったり、地域とつなぐ役割を担ったりすることで、保護者と子どもたちが安心して生活できる環境をつくることを目指しています。
ワークショップで話を聞く中で、様々な課題が浮き彫りとなりました。村から学校まで遠く、雨季には交通手段がなくて通えない、親が遠くの町で働くために子どもは老いた祖父母や親戚に預けられたままになっている、親が行方不明になる、家庭内暴力、だまされた末の人身売買、麻薬に染まる青年たち。こうした難しい状況の中で、子どもたちとその家族を守っていくためには地域全体の意識改革も大切です。
どのような状況であろうと、子どもたちが家族と一緒に健康に暮らし、教育により将来の選択肢を得ることは、世界共通して大事なことです。そのためのご支援をよろしくお願いします。
本事業は、個人・法人の皆さまからのご寄付ならびに「日本NGO連携無償資金協力(外務省)」の助成により実施しています。