【ガザ】70年の苦難に寄り添う支援をパレスチナで
特定非営利活動法人(認定NPO)ピースウィンズ・ジャパン
-封鎖されたガザ地区で若者に希望を-
5月14日に在イスラエル米大使館をエルサレムに移転したことに抗議するパレスチナ人の集会が、ガザ地区とイスラエルの国境沿いで開かれた。これにイスラエル軍が発砲しパレスチナ自治政府によると、50人以上が死亡、2500人以上が負傷した。2014年のガザ侵攻以来、最悪の犠牲者数となった。
世界の難民の約4人に1人はパレスチナ難民だということをご存じだろうか。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、世界の難民2,250万人のち、530万人がパレスチナ難民だ。昨年はパレスチナが占領されて50年、ガザ地区が封鎖されて10年目にあたり、今年はパレスチナ人が土地を追われ難民となった「ナクバ(大災厄、大惨事)」から70年を迎えた。占領下やキャンプでの生活しか知らない難民世代が増え続ける中、この10年の間に3度の紛争が起こったガザ地区では、飛び地に閉じ込められたまま軍事侵攻を受けた結果、多くの民間人の死傷者とインフラの破壊があった。
人の移動と物資の輸出入が大きく制限された封鎖下で復興は遅れ、若者の失業率が約60%に達する深刻な状況を受け、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は2015年から2年にわたり、紛争で被災した若者に就労機会を創出する活動を通して、現金収入を得て生活費の捻出が可能となるよう支援を行ってきた。教育、保健、農業等の分野で草の根活動を行う現地の市民団体に若者を数ヵ月派遣し、その間の賃金はPWJが支払う。若者は実地での職務経験を積みながら就職につながるスキルを磨き、受け入れ団体は有望な人材の育成と確保が可能となる。
失業率の高さから、短期の就労経験で雇用という成果を出すのは非常に厳しいものの、これまで1,200人以上の若者が活動に参加し、教員に採用されるなど、職を得る者が増えつつある。数学教師としてガザ地区北部の市民団体で3ヵ月就労したイルハムさんは、「仕事がなく家に近所の子どもを呼んで勉強を教えていましたが、就労中にアクティブ・ラーニングの手法を学んで子どもたちへの補習クラスで実践したり、他の教師と一緒に教材開発をするなど、とても良い経験になりました」と話し、数学教師としての求職活動を続けている。得た賃金を家の修繕や食費・光熱費に充てたほか、結婚資金や英語試験の受験料の足しにするなど、活動に参加した若者たちは現在の生活だけでなく将来への投資もしていることが確認された。
2017年のガザ地区の失業率は43.6%と依然として世界で最悪レベルで、190万人の人口のうち約4割が29歳以下の多子若齢社会において、大学を卒業しても職がなく、封鎖下で閉塞感を募らせた若者たちが将来に希望を見いだせない状況が続いている。その不満や疎外感が強まるほど過激な形で表出されるなど、地域の不安定を招く懸念がある。
パレスチナ占領は最も長期にわたる民族自決権の剥奪(アラブ人間開発報告書2016)であり、今も続く自分たちの苦難を世界から忘れられている・見放されているという危機感をパレスチナの人々は抱いています。PWJではこれまでの活動を踏まえて、今年からより中長期的な支援として職業訓練事業を開始し、新たに保健分野での活動も視野に入れ、希望が見いだせるよう支援する予定だ。
パレスチナでの活動は、皆様からの温かいご支援に加えて、ジャパン・プラットフォームや外務省日本NGO連携無償資金協力からの助成を受けて実施しています。
特定非営利活動法人(認定NPO)ピースウィンズ・ジャパン