【南スーダン】スーダン危機から10ヵ月―健康に生きるための食料の配布支援を開始
2023年4月にスーダン共和国(以下、スーダン)での騒乱が勃発してから10ヵ月が経ちました。隣国南スーダン共和国(以下、南スーダン)には、日々スーダンから母国南スーダンに戻る人びとが絶えません。国境を越えた後、既存の避難民キャンプへ行く人もいれば、コミュニティに身を寄せる人もいます。いずれにしても、生活状況は過酷で、日々の食べものを確保することさえも難しい状況です。
スーダンから帰還した人びとが身を寄せる場所の一つ、アッパーナイル州メルート郡では、世界食糧計画(WFP)がそうした支援を必要とする人びとを対象に食料を配布していますが、増え続ける人口に対し、支援は行き届いていません。この状況を受けて、ピースウィンズ・ジャパン(以下、ピースウィンズ)はジャパン・プラットフォームからの助成を受けて、帰還した人びとを対象に、食料を配布することとしました。
■健康に生きるための食料
食料配布は、空腹を満たすためだけのものではありません。十分な栄養を摂取し、体力や免疫力を高めることで、感染症をはじめとした病気にかかることを防ぎます。逆に言えば、栄養失調に陥ると、免疫力が低下し、感染症に罹患するリスクが高まり、特に劣悪な衛生および医療環境では死に至るリスクもあります。帰還した人びとが身を寄せる場所は、決して衛生環境は良くなく、万全な医療サービスへのアクセスがあるわけではありません。このため、生命維持に加えて、健康のためにも食料配布は重要なのです。
また、食料が生きる上で必要不可欠なものであるがゆえに、それを手に入れるために、特に女性や子どもがジェンダーに基づく暴力にさらされる危険性があります。食料を確保するということは、女性や子どもをそうした危険から守ることにもつながります。
■帰還した人びとの生活状況
支援を開始するにあたり、帰還した人びとの生活は実際どのような状況なのか、ピースウィンズは調査を行いました。メルート郡ニュースーダン小学校には、ここ数ヵ月の間にスーダンから南スーダンに戻ってきた人びとが避難生活を送っており、その数は日々増えています。保護者がいない子どもたちも少なくありません。
避難生活を送るスペースの一角には、即席の調理場がありました。しかしながら、食料を自分たちで買うことはできず、支援もないため、人びとは周囲の人からソルガム粉をもらうことで、飢えをしのいでいます。
そのほかの場所では、現地で手に入る木々と土で作られた家で生活している人もいます。上述の人びとと同じように、自分たちで食料を手に入れることは簡単ではありません。また、メルート郡は過去数年にわたり豪雨による洪水被害を受けています。現在は乾季であるものの、気候変動の影響を受けて雨季の到来する時期が予測不可能となっている今、現状のままでは豪雨によって家屋が浸水する可能性があるだけでなく、衛生環境の悪さにより水系感染症が蔓延するリスクも残ります。ピースウィンズの調査では、食料だけでなく、安全に生活するための住居、安全な水へのアクセス、衛生環境の整備といった課題も、同時に明らかになりました。
■食料配布の準備を開始
現在、ピースウィンズは南スーダン国内の業者から食料を調達し、調査を通して確認された帰還してきた人びとに食料を配布すべく、準備を進めています。
今回の事業では一家族に一回の配布を行いますが、これは決して十分ではありません。また、食料配布というのは応急処置のようなもので、さらに人びとが自分たちで食料を手に入れることができるようになるための支援が必要です。今回の支援を通じて、まずは生命維持と健康の確保に貢献しながら、さらなる食料配布や、自分たちで食料を得られるようにする、例えば農業や漁業など生計を支える支援の重要性を訴えていきます。
本事業はジャパン・プラットフォームからの助成と、みなさまからのご支援によって実施されています。スーダン危機により、南スーダンで支援を必要とする人びとの数は増えています。引き続き、温かいご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。