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【南スーダン】度重なる苦難を乗り越える -ジョングレイ州での緊急物資配布-

10月初旬、PWJが2006年から活動を行っているジョングレイ州の一部地域で大規模な洪水が発生し、家屋3,260棟、学校7校、診療所4軒が破壊され、浸水した家屋の崩壊をおそれて2万人以上が高台に避難しました。PWJ現地スタッフと提携団体は、被災した6村をボートでまわり、857世帯に水衛生環境改善のための支援物資を届けました。
PWJは提携団体に依頼し、洪水による避難民の数、置かれた状況と必要な物資を確認すべくナイル川の中州の6つの島で調査を行いました。被災地は水浸しで車は使えないのでボートで移動し、1泊2日テント泊、水や食料は全て持参し、衛星電話しか繋がらない地域を巡ります。島々に辿り着くと村長をはじめとするコミュニティの代表者たちを集め、ニーズ把握のために聞き取りと世帯訪問を行います。2013年12月の紛争でボーから川を渡り避難した人々は今でもボーの治安悪化を恐れ、陸に戻る気がしないと言います。島には魚以外何も無いので、たまに大金をはたいてボートに乗り、食料等を買いにボーへ出掛けるそうです。魚を天日干しにしてボーに売りに行く人もいます。大きな島には300世帯が住んでいますが、学校や病院はおろかトイレもありません。聞き取りの結果、川上の住人が洗濯したり用を足したりした小川の水を、川下の住人は料理や飲料用に使っている事がわかりました。
これを受け、PWJと提携団体は水衛生キット(バケツ、浄水剤、石鹸など)を配布することを決定しました。緊急支援物資は、教育キット、井戸キット、食料バスケットなど、分野毎に決まった物資内容と規格があります。団体によって物資内容が異なると被災者間の争いに繋がる可能性があるためです。今回は870世帯分の水衛生キットをボートに積み込み、調査の翌週、3泊4日の配布の旅に出ました。この時は、たくさんの物資を運ぶため、州都ボーから被災地へボートを二往復させました。
ボートで支援物資を運ぶwash nfi distribution pah oct27-30 (10) WASH NFIs
写真左:ボートで支援物資を運ぶ
写真右:被災地につき、ボートから物資をおろす
配布の前に必ずすべきは受け取り人登録です。支援物資配布時に「私はもらっていない」、「あいつは村の者じゃない」、「あの人は2つもらった」等の混乱は付き物です。用意した数の物資が然るべき被災者に渡るよう、村のリーダー達から村人全員に配布手続きを伝えてもらい、職員はメガホンでアナウンスを続けます。世帯代表は登録に並び、家族構成を把握しているリーダー達は二重登録の回避のために登録を手伝います。水衛生キットの使い手は主に女性なので、今回は女性を世帯代表にしてもらいました。
受取の順番を待つ間に、川の水を専用の布で濾過する方法、塩素で水を消毒する方法等を職員が予備の物資を使って実演し、各物資の使い方を説明しました。この地域には他の支援団体が入っていないため、布を通すだけで水がどれだけ奇麗になるか、そして普段使っている水の質が健康にどう影響するか等、被災者が初めて水と公衆衛生について学ぶ機会となりました。
物資配布の様子配布した物資の使い方を教えている様子
写真左:物資配布の様子
写真右:配布した物資の使い方を教えている様子
南スーダンでは未だ戦闘が続き、長引く避難生活のストレスで隣人との小さな問題が火種となり部族間の争いに発展する等、主にヌエル族とディンカ族の争いが国の北部で顕著です。PWJと提携団体のスタッフはディンカ族が多いので、要請があってもヌエル族の住む被災地には行くことができません。反対に、ヌエル族職員の多いNGOは現地政府や空港警察に不当干渉を受けたり、特定部族のスタッフを狙って住民が事務所を襲撃したりする例もあります。
今回物資配布を受けた人々のように、自身も紛争被害者であり、他部族の避難民を地域に受け入れた事で元々乏しい資源が枯渇し生活が苦しくなっていたところに、更に洪水被害に遭うという事態で、部族にかかわらず全国民が何らかの困難に直面しているのが今の南スーダンではないかと思います。川をはさんだ陸側の町の治安は徐々に安定し町は再建され、PWJが活動する村の一つでは最近お祭りが行われました。多くの住民が集まり太鼓と合唱に合わせて楽しそうに踊る様子が、南スーダンの紛争からの復興と民族を超えた平和の到来の兆しであるようにと願います。
報告:清水 貴子(南スーダン事業担当)
※本支援は、ジャパン・プラットフォームからの助成や、皆さまからのご寄付により実施しています。

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