【南スーダン】日本の私たちにできる支援
今回は、出張で訪れている南スーダンの首都ジュバでこの記事を書いています。相変わらず蒸し暑いジュバですが、私が駐在していた2013年と比べ、2階建て以上の綺麗な建物が増え、主要道路にはソーラー発電の信号機が設置されてちゃんと機能しており、さらにはおしゃれな新しいホテルもオープンしました。
治安さえ良くなれば、ナイル川下りツアー、水上サーフィン、川沿いのレストラン、中州でのバーベキュー、国立公園での野生動物観察など、外食産業・観光業も開発の余地が存分にあります。現在も日本人が国連、JICA(国際協力機構)、自衛隊、コンサルティング企業、大使館などで活躍していますが、以前は人数がもっと多く、ジュバだけでなく地方にもNGO職員や学術研究者が滞在していました。
現在、ジュバにはタイ料理、中華、イタリアン、レバノン料理、インド料理、コンチネンタル等々、各国料理のレストランが点在し、外国人で賑わっているのですが、日本料理店はまだなく、海外でも「sushi」と呼ばれて人気の高い寿司など、和食を楽しめるレストランを心待ちにしている食通の外国人が多くいます。
南スーダンは食料自給率が低く、食材は野菜や卵までも隣国ウガンダから輸入しています。しかし、この地域の肥沃な土とナイル川の豊富な水量をもってすれば、農業の発展は約束されたようなものだと思います。地方の事務所では、庭に種をばら蒔くだけで野菜がぐんぐん育ったものでした。将来的には家計の負担軽減の助けや新たな収入源となるよう、すでに地元民に親しまれているトマト、玉ねぎ、オクラなどの作物を自分たちで育ててもらうため、農業を教えることは、優れた農業技術を持つ日本にできる支援の一つのあり方ではないでしょうか。
農業以外にも日本にできる支援の形はたくさんあります。南スーダン人が大切にしている白い牛のことをご存知でしょうか。牛は男性のみが所有でき、所有する頭数がその人のステータスを意味します。男性は草地を牛と共に転々と旅し、自分のステータスを誇示するのです。そのために、銀行強盗ならぬ牛強盗が頻発し、銃が出回っている昨今は、飼い主と強盗団の銃撃戦で人命が奪われることもあります。このように重要な財産である牛ですが、なんと毎年疫病で三百万頭も死んでいるそうです。
また、牛のミルクの生産量は低く、家庭での消費で終わっているようです。牛の疫病対策を講じることで牛の全体数を増やすことができれば、牛をめぐる争いは減らせるのではないか。そして、酪農技術を教えることで牛からとれるミルクの量と質を向上すれば、家庭で消費しない分を使って地域のミルクビジネスに発展させることができるのではないか。このような変化をもたらすことができれば、牛は争いの火種から平和の使者に変わるのではないか、と、アメリカの援助関係者と話していたところです。
また、アフリカではどこもそうですが、南スーダンでも日本車が多く走っています。しかし、車両修理の技術・人材不足、そして悪路や雨季の河川の氾濫も相まって、頻繁に修理が必要なのに費用が高く、どの支援団体も困っています。車両修理の人材育成も、日本の技術力を活かしながら南スーダンで暮らす人々に役立つ支援の一つの形でしょう。
前述のアメリカのNGO職員からは、「日本は資源も特に無い人口過密の小島なのに、東日本大震災後の復旧も、ほかの大国が成し得ないほど早かった。日本の技術力と仕事への真摯な姿勢を活かせば、南スーダンも数年でどれだけ発展することか」と、嬉しい言葉もいただきました。南スーダンの発展のため、日本人である私たちにどのような支援ができるか、皆さんも是非想像してみてください。
報告:清水貴子(南スーダン事業担当)
※この事業は、ジャパン・プラットフォームの助成や、皆さまのご寄付で実施しています。