【スリランカ】10年越しの故郷への帰還/小規模ため池灌漑施設修繕
「私たちはこれまで誰からも支援を受けることはありませんでした。日本の皆さんが私たちのことを考えてくれたこと、本当に嬉しく思います。」
そう話してくれたのは、カランガライ農民組合の組合長のクルクラシンガンさんと書記のニラマラカンダンさん。この日は、農業用小規模ため池灌漑施設(以下マイナータンク)の修繕内容についてカランガライ農民組合の人々に説明会を行いました。
彼らが暮らすスーダクダ村は、スリランカ北東部に位置するトリンコマレ県ムトゥール郡にあります。内戦から現在にいたるまで軍の施設が置かれ、これまで故郷に戻って暮らすことも、農業をすることもできませんでした。
2016年の年末に敷地内で農業を行う許可がおり(居住許可はおりませんでした)、最後に収穫した2006年から10年以上もの時を経て念願の再興となりました。このため、マイナータンクも10年以上放置されたためほぼジャングルと化しており、水の確保が難しく、せっかく農地が解放されても、農業の復興は難しい状況にありました。
近年は温暖化の影響か雨季に十分な雨が降らず、農民は干ばつに苦しめられました。マイナータンクの水は稲作用の水として活用されるだけでなく、人々の生活用水はもちろん、乾期には象などの野生動物の生命を繋ぐ水場ともなります。彼らも自らの暮らしと農業の復興のため、ピースウィンズ・ジャパンのエンジニアからの説明を理解しようと集中して聞いていました。
このプロジェクトは農民組合の人たちが主体となり、重機の手配から現場監督まで組合員が一丸となり取り組みます。私たちピースウィンズ・ジャパンはあくまで、技術面の支援や助言を行うだけです。そのため、支援を終えた後も彼ら自身で設備を修繕・維持管理していけるようになります。
そして、説明会の日とても嬉しいニュースが届きました。なんと今年2018年の10月に居住許可がおり、彼らは再び自分たちの故郷で暮らすことができるようになりました。
津波、そして内戦直後には多くのNGOがこの地で活動していましたが、現在はほとんどのNGOがこの地を去ってしまいました。しかし、今後もこの地域では徐々に再定住が進んでいきます。様々な思いを胸に抱え、故郷に戻り、また新たに生活を始める人々。彼らに寄り添い、共に復興に向けて前へ進んでいくことが、この地で活動を続ける私たちピースウィンズ・ジャパンの使命なのかもしれません。
本事業は外務省の日本NGO連携無償資金協力からの助成金とサポーターの皆様からの寄付金、また地元政府のサポートを得て実施しております。
これからも彼らの新しい生活の再スタートの応援、ご支援の程、どうぞよろしくお願いいたします。
現地調整員 佐藤