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【スリランカ】ピースウィンズが提案する循環型農業が土壌改善・生計改善に効く!

スリランカのトリンコマリー県では2023年8月よりJICA草の根技術協力事業の支援を受け、「トリンコマリー県の地元資源を生かした循環型農業の普及による小規模農家の持続可能な生計の確保事業をトリンコマリー県農業局と協同で実施しており、間もなく1年が経とうとしています。1年目には8村落にて500名以上の農家に循環型農業のトレーニングを行いました!
 
トリンコマリー県は、スリランカの東部海岸線沿いのドライゾーン(乾燥地帯)に位置しています。このため農家の主な収入である稲作は雨季(10月~1月ごろ)に限られており、その他の時期は野菜栽培や畜産、漁業、日雇い労働などで生計を立てている人がほとんどです。
 
皆様ご存じの通り、2022年スリランカは経済破綻を起こし、外貨が枯渇したため、燃料だけでなく化学肥料や農薬など輸入もストップしてしまいました。また、昨今の気候変動の影響により、季節外れの豪雨や干ばつなどの被害も深刻です。
 
今まで化学肥料や農薬に頼り、灯油を使って揚水ポンプで井戸から水を汲み上げていた農家はお手上げ状態となりました。そこでトリンコマリーの地域性を生かした循環型農業の普及を始めました。
 
トリンコマリーで簡単に手に入るもの!
 
牛糞、ヤギ糞、ゾウ糞、鶏糞、魚、黒糖、グリセリアなどの窒素豊富な草木、ニームなどの薬草多種、牛の尿、米ぬか、もみ殻、刈草など。これらの資材を活用することにより、実は優良な堆肥や液肥、自然農薬が簡単に作れることを多くの農家が知りません。
 
これらの知識をなるべく多くの人に普及させるため、農作業や不定期の日雇労働、葬式に祭りなどの地域行事、病院の付き添いなどに忙しい農家がトレーニングに参加する機会を逃さないよう、同じトレーニングを同じ地域で複数回行うようにしています。
 
さらに頻繁に農家を訪問することにより、取り組み状況の確認だけでなく、農家が抱える「今現在の問題」にオンタイムで答えられるようにしています。
 
・日本式コンポスト生産のトレーニングの様子
 
スリランカは日本と異なり、高温多湿のため水分管理と温度管理さえしっかりできれば、日本より簡単に発酵が進み、良質の堆肥が短時間で作れるようです。
 

コンポスト生産トレーニングの様子

 
・トレーニング後、各家庭でコンポストを作り始めました
 
コンポストを仕込んで、その後数日、日本から取り寄せた温度計で温度を計り、しっかりと温度をキープするため水分調整や空気を混ぜ込むように撹拌することを指導します。順調に発酵して、温度は50℃以上に上がり、成功です。
 

各家庭でのコンポストを作り始めました!

 

数日後に農家から温度の報告が!

 
・液肥生産の様子
 
牛糞とグリセリアという窒素が豊富な葉っぱを混ぜ込み、牛尿と水を混ぜます。
 
1ヶ月ほど寝かせて液肥の完成!窒素分が豊富で、原価はほぼゼロ!
 

牛糞とグリセリアの葉っぱを揉み込む

 

毎日かき混ぜて発酵を促し完成

 
・野菜や果樹の剪定指導
 
スリランカでは日本のように頻繁に剪定するという習慣がありません。野菜も木は伸びたいように枝葉を伸ばし(Let it be)、バランスが保てなくなり自力で立っていられないような状態のものも頻繁に見かけます。ナスもトマトも地面についてしまったり、繁茂しすぎてせっかく実がついていても気が付かず収穫されていなかったり…。マンゴーやグワバなどのフルーツの木はそこら中に生えているのに、実の付きが悪い、実がついても高いところにありすぎて収穫できない、病害虫の被害にあって見栄えが悪く売れないなど、生産性がとても低い。
 
一方でスリランカは高温多湿なので、日本では考えられないぐらいの強剪定をしても植物はすぐ復活します。剪定をすることで高さのコントロールもでき、枝葉の密集が避けられ、通気性をよくすることができ、病害虫被害の拡大を削減できます。適切な時期に適切な剪定を行うことで生産性も上がり、農家の収入に繋がります。
 

農業局指導員による剪定トレーニングの実施。かなりの枝葉を落とすので農家は若干衝撃を受けます。

 

広島県の神石高原町から有機農業の専門家の田邊さんが来て、ナスの剪定方法の指導を行ってくれました。

 

田邊さんによるナスの剪定と仕立て方の指導も

 
・農業局指導員とピースウィンズのスタッフによるコンサルテーション訪問
 
頻繁に農家を訪問して農家が抱える問題などにアドバイスを行います。農家は害虫による被害なのか、連作障害なのか、栄養不足なのか、判断できず間違った対処をしてしまうことが多いため、農家と良好な関係を持ち、適切にアドバイスすることを心がけています。
 

とうがらしの病害虫被害に答えるピースウィンズスタッフ(左)彼女は最近農学校を卒業した1児の母。暑いラマダンの時期にも精力的に農家を回って、農家の質問に親身になって答えてくれていました。

 

この写真のとうがらしは連作障害の可能性が高いです。

 
乾燥地域であるトリンコマリーでは栽培できる種類の野菜が限られていることと、農家は連作障害の知識がまったくないため、同じ種類の野菜ばかり育ててしまい病気にかかるケースが多いです。どの野菜がどの種類に属しているか、連作障害についてもトレーニングで説明します。
 

土壌診断の結果を見るスタッフと農家

 
簡易土壌テスターを農業局の農業指導員に配布し、訪問時に「窒素(N)」「リン酸(P)」「カリウム(K)」のバランスを計り、農地ごとの土の質をみて土壌改良方法をアドバイスします。
 
トリンコマリーは砂質か粘土質の土がほとんどで、NPKのバランスも悪いため、改善方法を指導します。
 
乾季である現在は特にマルチングの指導に力を入れています。

訪問後は、訪問時の状況やアドバイス内容などをGoogle Spreadsheetにてピースウィンズのスタッフと農業局の農業指導員とで共有し、次回訪問時に前回アドバイスした内容が実施されているか、進捗を確認します。現場でスマートフォンを使ってその場で確認できるため、大変便利です。
 
・簡易会計トレーニングの実施
 
農家の多くが収入と支出、利益の概念を理解していないため、支出が収入をより多くても、収入があるだけで、「もうかった!」と勘違いしている人が少なくありません。
 

会計トレーニング

 
簡単なお小遣い帳レベルから始めて、収入と支出のバランスを見てもらいます。現在、化学肥料が手に入るようになりましたが、その値段はとても高く、昔のようにジャンジャン使えるものではありません。会計簿をつけることにより、手作りの液肥や堆肥に少しずつ置き換えることで化学肥料に使う支出を減らして、利益を増やし、家計が改善していくことを体感してもらいます。
 

会計簿のチェック

 
その後の訪問で会計簿の内容をチェックします。
 
会計簿のトレーニング実施時に透明のバッグを渡し、今まで受講したトレーニングの教材や資料、会計簿をひとまとめにして保管してもらい、絶対なくさないようにしてもらいます。
 
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本事業はJICA草の根技術協力事業資金と皆さまからのご支援で実施しています。

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