対話促進や心のケアを重視し避難民をサポート
2006年5月の騒乱による国内避難民の発生を受け、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は国際平和協力センター(IPAC)と協力して緊急支援を行ってきましたが、1年たった今もなお、家に帰れない約2万人が首都ディリなどで避難生活を送っています。支援のなかで重視しているのは、対話促進のための教育や心のケアといったソフト面でのサポートです。今回は3つの取り組みを報告します。
「LAFAEK」の表紙
(C)PWJ/IPAC/Seiko TOYAMA
■平和づくりを学校から
まず教育支援のひとつとして、学校教師向けの冊子への寄稿を通じた平和教育に取り組みました。この冊子「LAFAEK」は、東ティモール教育省と国際NGOケア・インターナショナルが隔月で出版し、全国の教師や小学生に配布しているものです。騒乱以降は、対話の大切さなどを訴える記事がたびたび紹介されています。
3-4月号では、問題解決のためのコミュニケーション方法として、「対立したときの話し方、聴き方」などを3ページにわたり紹介しました。また5-6月号では、「紛争に直面した際、第三者として何ができるか」を取り上げました。放火や投石が発生したり、学校内で児童同士がけんかをしたりした場合、第三者がどう対応すればしずめることができるか、また逆に問題をエスカレートさせるかについて、いくつかの例を挙げて解説。自分の行動がどんな影響を及ぼすかを考えるための材料を提供しました。
(C)PWJ/IPAC/Seiko TOYAMA
■スポーツ大会で避難民と地元住民の和解を促進
ディリ市郊外にあるヘラポート・メティナロの両避難民キャンプ周辺では、避難民と地元の村の人びとがともに参加するスポーツ大会を開きました。ディリは国の西部に位置しますが、避難民の大半は東部の出身。騒乱の背景に東西の地域対立があったことから、スポーツを通じて和解を促すねらいです。
この地区での調停を担ってきた地元NGOと、キャンプを管轄している国際移住機関(IOM)の協力で、3月下旬に避難民・住民の双方の代表からなる委員会を組織。開催場所を決め、草刈りなどの準備をしてきました。5月4日にヘラ教会の敷地内で開かれた開会式には、両キャンプと7つの村から計27のサッカーチーム、バレーボールチーム(総勢342人)が集まり、事前に配られたユニフォーム姿で順番に入場しました。キャンプのチームがやや遅れて到着した際には、大きな拍手が起きました。国立東ティモール大学のキャンパス内のサッカー場と、教会のそばにつくられたバレーボールコートで、リーグ戦を連日展開。避難民と住民が、過去の対立を乗り越え、協力して大会を運営しました。
(C)PWJ/IPAC/Seiko TOYAMA
■避難民キャンプで子どもたちの大運動会
5月20日の独立記念日にちなんで、ディリ市内のオブリガードバラック避難民キャンプ在住の子どもたちを集め、大運動会を開催しました。キャンプ生活の長期化によるストレスや、騒乱のトラウマを軽減することが目的です。低学年の子は、つなひき、マーブル競走(おはじきを乗せたスプーンを口にくわえて走る)、「誰のテントが一番きれいかな」競争など、そして高学年はバレーボール、バスケットボールなどの競技を、3日間にわたって繰り広げました。
表彰式では、子どもたちによる歌や踊りが1時間ほど披露された後、PWJ/IPACと国際NGOコンサーンの代表者が各種目の優勝者たちに賞品を手渡しました。ノート、鉛筆などの学用品や、テント生活で必要なせっけん、はみがきなどが配られ、子どもたちの顔がほころびました。
(C)PWJ/IPAC/Seiko TOYAMA
(C)PWJ/IPAC/Arsenio da SILVA
※PWJの東ティモール国内避難民支援事業は、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の協力を得て進めています。