アルビル州ハンダ小学校の校長先生から心温まるメッセージが届いています。
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、2009年後半よりイラク北部の教育環境を改善するための支援を展開しています。2011年6月7日にアルビル州の小学校7校の改築を開始し、今年3月に終了しました。
悪天候による作業の遅れや追加工事の実施により、計画より3か月後の2012年3月に、予定通り7校の改築が完了しました。完成した学校の様子を、今週から2回に分けてお届けします。第1弾となる今回は、教育歴30年になるアルビル市バハール地区ハンダ小学校のマジィード校長先生のインタビューです。
人口増加により不足していた教室
「私の教員人生のなかでも、この2年間は一番苦しい年でしたが、PWJの支援のおかげで、すべてが好転し、感謝しています」と、話し始めてくれました。
マジィード校長先生
「ハンダ小学校は、人口増加の一途をたどるアルビル市内にあります。教室不足のため、2010年度の入学希望者320人のうち、残念ながら200人の入学を拒否せざるを得ませんでした。私の家は、この小学校の校区内にあるので、入学を拒否された親の中には我が家にまでやって来て、入学を拒否されたのは差別だと怒鳴って帰ったり、わたしの家族に暴言を吐いたりする親もいました。そんな中で、1本の電話を教育省から受けたのです。それは、PWJからの支援の話でした。うれしくてすぐに教員たちにも伝えました」と、マジィード校長先生は当時を振り返ります。
人びとの心に響いた日本の支援
「ある日のニュースで日本に未曽有の大震災が起きたことを知りました。それは、昨年3月の地震と津波による大惨事でした。しかし、そのたった2か月後にPWJスタッフが学校を訪れて、『もう少しで支援を開始できる』と伝えてくれました。その知らせを聞いて、わたしは正直、ショックを隠せませんでした。日本は大震災の被害で危機的な状態にあるにもかかわらず、他国のことを忘れないで支援をしようとしてくれていることに驚いたからです。わたしは毎日モスク(イラク教寺院)で祈りをささげているので、皆にこの話を伝えました。話を聞いた誰もが日本への感謝と尊敬の意を示していました。」
待機児童200人の解消
「6教室が増築されたおかげで、待機児童200人を受け入れることができ、親からの文句もなくなり、わたしたち家族のハバール地区での生活も平静を取り戻しました。また、学校を囲むフェンスも改善されました。通常、学校のフェンスは外部からのぞくことができないように、ブロックでつくられたものが多いのですが、我が校のフェンスは一部が格子状になっていたため、フェンス外から内部の生徒に向けて投石があり、生徒がけがをしたこともありました。PWJの支援で、格子状の部分にパネルを設置してもらったおかげで、投石の被害がなくなりました。提供された学校・職員室用家具の質の良さに、教員たちも喜んでいます。」
「今回の支援により、我が校の教室数が増えただけでなく、教育環境が向上したことに、PWJや外務省、日本のみなさまへ深く感謝いたします。」
増築した6教室と修復したフェンス
新しい机で勉強する子どもたち
*本事業は、外務省「NGO連携無償資金協力事業」による資金や寄付金などにより実施しています。
*イラク北部には、増築修復、また新校舎の建設が必要な学校が少なくとも700校あるといわれています。PWJの「イラク北部 子どもの教育環境をYOKUしようプロジェクト」(詳しくはこちら)へのご協力、よろしくお願いします。