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【スタッフインタビュー】かつて難民として暮らした経験を糧に

ジェームズ・ガトベル・ロニーは、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)に2007年から勤務するプログラム・マネジャーです。PWJが主に事業を行なうジョングレイ州北部は、ヌエル人が多く住んでいますが、彼は母語のヌエル語を生かし、現地政府や住民とコミュニケーションを図り、円滑な事業実施に貢献しています。彼の生い立ちと、PWJで働くようになったきっかけ、またスーダン内戦時の体験などをお伝えします。
南スーダンの現地スタッフ ピースウィンズ・ジャパン
ΗPWJの南スーダン現地スタッフ ガトベル
「ジョングレイ州のアコボ郡(州東部、エチオピア国境近く)のクエリャン村で生まれ育ちました。私の父は勤勉な農民で妻は3人、私の生みの母には下から2番目の私を含め7人、父のあと2人の妻にはそれぞれ4人、7人の子どもがいました。50頭以上の牛やヤギを飼っており、子どものころは子牛やヤギの世話を手伝いました。学校は近くになく、勉強もストレスもない楽しい生活でした。
10歳の時、スーダン政府から反政府軍支援の疑いをかけられて家畜を奪われ、反政府軍も家畜を奪っていきました。やがて紛争が激化して身の危険が迫り、家族全員で住んでいた村から3週間かけて歩き、エチオピア国境付近のイタンという町の難民キャンプにたどり着きました(地図参照)。道中に出会った自分たちと同じヌエルの人々が食べ物をくれ、なんとか生きのびました。
ssudanmap
10歳のガトベルと家族が紛争を逃れて難民キャンプへたどり着いた道程
難民キャンプでは、スーダン人民解放軍(Sudan People’s Liberation Army)が15歳以上の男子をなかば強制的に徴兵し、私の兄も連れていかれました。父はキャンプで病気のため亡くなりました。キャンプでは、水・食糧・衣料もすべて配給制で、食べ物がなくてひもじい思いをしました。
足かけ20年ほど難民キャンプで過ごし、エチオピアの政府機関が担当するキャンプでの教育を受け、小学校に8年、中学校に4年通いました。学校生活だけが唯一楽しかった思い出です。キャンプで少しの職務経験を積み、収入を多少なりとも得ることができたのは励みになりましたし、やがて妻となる女性に出会い、結婚もできました。
ピースウィンズの南スーダン現地スタッフ ガトベルの妻と子供たち
ガトベルの妻と子どもたち
2005年に南北スーダンの包括和平が合意され、翌年に私は妻子と南スーダンへ戻ってきました。ボーは主にディンカ人が多く住む町なので、ヌエル人である自分は言葉も通じず、仕事を探すにも苦労しました。何の手がかりもないところから、同郷の人々を探して助けてもらいました。
ボーでは、ジョングレイ州教育省の教師研修の仕事に携わった後、PWJの求人に応募し、2007年11月に採用されました。自分が難民として暮らした経験から、国連やNGOの支援の大切さを身をもって感じています。人道支援に従事する者として、自分がかつて助けられたように弱い立場の人々を支えたいと思っています。
PWJの仕事は、これまで行ったことのない場所へ行けたり、普段会う機会のない政府機関や国際機関の関係者と一緒に仕事ができるという点でもやりがいがあります。また、ボーに事務所があり、ここに住む妻と11歳の長女をはじめとする5人の娘たちと長い時間一緒に過ごせるのもうれしいです。2011年には故郷のアコボ郡へ行きましたが、戦前の建物は破壊され、実家のあった場所へはもう道もなくたどり着けませんでした。
ピースウィンズの南スーダン現地スタッフ家族
PWJの事務所がある南スーダンのジョングレイ州ボーに暮らすガトベルの家族
エチオピア国内の難民キャンプには、なお約6万人もの南スーダン人が滞在していると言われます。私の姉妹もまだ難民キャンプにおり、もう6年間も会っていません。幸い今は携帯電話で時々連絡でき、彼女たちもアコボに帰りたがっていますが、牛強奪事件が多く治安が安定しないため、故郷が平和になるのを待っているのです。」
ガトベルのように、長年の内戦中に国を逃れて難民であった体験を持つ南スーダンの人びとが、今は祖国の復興のために努力を重ねています。PWJは、彼らとともに、これからもこの新しい国の未来につながる支援を続けていきます。
報告:原田靖子(南スーダン駐在)
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