身体障害者支援もより積極的に 先天性障害への対応も課題
「障害を持っている子どもが多い、という印象を持ちました」
ピースウィンズ ・ジャパン(PWJ)職員として2002年11月下旬にクルド人自治区に入った神谷保彦医師(小児科・熱帯医学)の感想です。
自治区の中心都市スレイマニア近郊のフワナ国内避難民キャンプ(約60家族)でも、神谷医師は3人の障害児を診察しました。うち2人は兄妹です。母親が「この子たちは、よく噛むことができない」「女の子がいつも泣くので、私も夜、よく寝られない」と訴えます。その日は天気のよい日だったため、2人とも外に出ていました。お兄ちゃんは1人で遊んでいるようでしたが、勝手にはって行かないように”重し”としてコンクリートブロックにつながれていました。
神谷医師は「太陽にあたること、外で近所の人と接して刺激を受けることは大変いい」「くぎやたばこを口に入れないように気を付けて」などとアドバイスをしていきました。
自治区の首都アルビル(現地語ではハウレィ)近郊のバンスラワにあるPWJの診療所を訪れた際も、脳性まひのために四肢が不自由になったとみられる13歳の女の子がやってきました。神谷医師は「しゃべることはできないが、3-4歳程度の理解力はあり、適切なリハビリが望まれる」と話しました。
診療所は彼女の祖母らにさらに詳しく事情を聞いたうえで、スウェーデンのNGOとも協力して支援していくことにしました。
社会サービスが十分に整っていない自治区では、身体障害者のケアも課題です。しかも身体障害者のなかでも地雷の被害者や戦傷者などに焦点が当たることが多く、脳性まひや発語障害のような先天性障害への対応はこれからの課題だと考えられます。PWJスレイマニア事務所の医師は次のように説明します。
「クルドでは30年、40年ずっと戦争が続いていました。イラン・イラク戦争時の地雷で被害に遭う住民も少なくありません。戦争で銃撃を受けた人もいて、障害者といえば、こうした人たちが大半なのです」
PWJでは地雷被害者らの支援にも取り組んできました。先天性の障害を抱えた人たちの実状などとも合わせ、今後も報告を続けていきます。