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【南スーダン】危機の爪あと ‐ケニア・カクマ難民キャンプの調査から‐

皆さんは「南スーダン危機」を覚えているでしょうか。
2013年12月中旬、軍内の部族間対立から始まった軍事衝突が瞬く間に南スーダン全土へ拡大すると、世界一新しいこの国の内紛は「南スーダン危機」として世界の耳目を集めました。
PWJが長年にわたって活動してきた同国ジョングレイ州でも大きな戦闘が起こり、日本人職員は退避を余儀なくされました。南スーダン国内では現在も武装闘争が続き、国内避難民144万人と近隣国へ逃れた難民47万人が今も避難生活を続けています。
このうち、南スーダン危機から逃げてきた4万人の難民が暮らしているのが、ケニア北西部に位置するカクマ難民キャンプです。
カクマキャンプは現在20以上の国々から18万人弱の難民を受け入れていますが、南スーダン危機を受けて南スーダン難民が短期間のうちに大量に流入したため、もともとあった3つの区画に加えてカクマ4と呼ばれる新たな区画が整備されました。
PWJは母国を離れて避難した南スーダン難民の生活を支えるため、カクマ4での支援事業開始を目指し、2013年10月末に外務省からの助成を受けて実地調査を行いました。
キャンプ周辺には枝をくみ上げ布を被せた住居が並ぶ キャンプ内は建設中の仮設住宅の屋根代わりの白いビニールシートが続く
写真左:キャンプ周辺には枝をくみ上げ布を被せた住居が並ぶ
写真右:キャンプ内は建設中の仮設住宅の屋根代わりの白いビニールシートが続く
現状を把握するため、現地で活動する国連機関や国際NGOから聞き取りを行ったところ、仮設住宅やトイレ、学校の建設が難民の流入に追い付いていないことや、キャンプ内の道路や排水路が整備されていないことなど、カクマ4での多くの支援ニーズが浮き彫りになりました。
加えて、カクマ難民キャンプ周辺に暮らすトゥルカナ人住民の生活は貧しく、キャンプよりも恵まれない生活を送っていることが見てとれました。
他の難民キャンプだと、キャンプに住む難民がキャンプ外で働き口を探すのが一般的ですが、ここカクマキャンプでは周辺住民がキャンプに住む難民に雇われるなど、立場が逆転しています。
キャンプ周辺地域には支援がほとんど入っておらず、キャンプに住む難民は清潔な飲み水を得られる傍ら、キャンプ外には十分な数の井戸もないため、周辺住民は何キロも歩いて幹線道路の脇まで出てきて、行き交う車に飲み水をせがむのだそうです。
このように生活環境の落差があるために周辺住民が支援機関に対して抗議行動を起こすこともあるので、キャンプで支援事業を行う際には周辺地域への配慮が欠かせません。
また、様々な民族が暮らすカクマ難民キャンプでは、難民同士のトラブルも起こります。
ちょうどPWJの調査隊がカクマを訪れていた時、南スーダン危機の引き金となった2大民族の対立がカクマキャンプの難民の間で再燃し、若者グループ同士の暴力の応酬に発展しました。
周辺住民にしても難民にしても、紛争で母国を追われたり、貧困や欠乏にさらされたりと、苦難に耐えて生きている人々です。
彼らが単純なきっかけでいさかいを起こしてしまう根底には、こうした苦難から生まれる漠然とした不安や不信感があるのではないでしょうか。
争いの火種となるこのような根の深い問題の解決に向け、日本に生きる私たちにどんなことができるのか、南スーダン危機から1年以上が経過し記憶が風化しかけた今、タウトク読者の皆様にも考えてみて頂ければ幸いです。
報告:船山 静夏(南スーダン事業担当)
※本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成や、皆さまからのご寄付により実施しています。

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