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コラム&インタビュー

【ウクライナ】3年間戦禍が止まないウクライナ(連載1)

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部

「戦時下の人びとが今こそ必要とする支援がある」
ウクライナ事業担当 倉持真弓インタビュー

2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから今年で3年。4回目の2月24日がめぐってきます。この間、ロシアによる激しい攻撃は続き、ウクライナの人びとの心身が休まることは一度もありませんでした。ピースウィンズはロシアによる侵攻直後より、前線から逃げる人びとの退避支援や避難所への食糧や物資の支援、病院への医療機器や医薬品の提供、破壊された幼稚園の修繕や学校への学習機材提供など様々な支援を行ってきました。戦闘が続く中、こうした支援が必要なことに変わりはありませんが、危機が4年目に入る中で新たな支援が重要になってきています。隣国モルドバに駐在してウクライナ事業を担当する倉持真弓に聞きました。

避難所でセラピードッグと触れ合う倉持

心身ともに限界にきている

――現在行っているウクライナ支援事業はどのようなものですか?

倉持 ひとつは北部チェルニヒウの学校で始めた子どもたちの心理ケアです。先日中学校で13歳から15歳の少年少女を対象にした1回目のグループセラピーが行われました。これは「フェリシモ地球村の基金の支援を受けて行う事業で、4ヶ月のプロジェクトです。心身に大きは変化が起きる思春期は何もなくても大変なのに、ウクライナの子どもたちは戦時下で大きな不安とストレスを抱えています。しかも子どもの場合、自分が抱える心の傷に気づいていないというか、自分の心に何が起きているのか理解できていないケースが往々にしてあります。なので、精神科医が様々な活動を通して、彼らが胸のつかえを少しでも解消できるようガイドしていくのです。


――戦時下で成長するストレスは大きいでしょうね。

倉持 はい。昨年秋まで同じチェルニヒウ州で女性のための巡回医療プロジェクトを行っていた時に改めて感じました。婦人科検診と合わせて個人カウンセリングやグループセラピーといった心理ケアを行ったのですが、普段家族の前では気丈に振る舞っている女性たちが、大切な人を戦場に送ったり亡くしたりした経験を語り合っているうちに感情があふれてきて、言葉に詰まったり、涙が止まらなくなることがありました。戦争が3年も続いて、今のウクライナでは大人も子どもも、みんなが心のケアを必要としていると思います。話を聞くと、心身ともに限界にきていることがわかります。彼らの苦しみは外見からはわかりにくいし伝わりにくいのですが、今こそ重要な支援があると強く思います。

――他にはどのような事業がありますか?

倉持 2月末までクラウドファンディングで支援をお願いしているのは、チェルニヒウ州の幼稚園に発電機を設置する事業です。ロシアによるインフラへの攻撃のためウクライナでは計画停電や突然の停電が頻発しています。攻撃があると幼稚園でも地下シェルターに逃げ込むのですが、停電していると寒く暗い中で子どもたちは何時間も過ごさなければなりません。また、温かい食事を用意するのも難しくなります。こうした状態を少しでも改善するために、発電機を届けます。2月半ばに目標がほぼ達成できたので、できれば目標金額を上げて永続的に電力が供給できるソーラーパネルも設置したいと考えています。みなさまのご支援をお願いしたいです。

幼稚園の地下シェルターで園長(左)と打ち合わせするピースウィンズのスタッフ

――倉持さんは以前別のNGOでカンボジアの教育支援をしていたのですよね。その経験と比べて、ウクライナ支援事業の難しさを教えてください。

倉持 カンボジアで教育支援活動をしたのは内戦が終わってから何年も経ってからのことで、貧困の中で暮らしをどう良くしていくかという目標のわかりやすい環境で仕事をしていました。でもウクライナは戦争が進行中で、世界情勢の波をまともに受けていつ何がどうなるかまったくわからない状況です。人びとが必要とする支援も変化していきます。外見だけでは見えにくいウクライナの苦悩をどう伝えれば良いのか、どうすればウクライナの人びとが必要とする支援を日本のみなさんにわかってもらえるのか、それが今とても悩ましいところです。

避難所で暮らす人たちに「必要なものは何ですか?」と聞くと、「何もない」という答えがよく返ってきます。そして次に「ただ、家に帰りたいだけです」と続けるのです。でも、多くの人にとってその家はもうありません。この心の痛みがわずかでも軽減するよう、できる限りの支援を続けていきたいと思います。

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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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