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インタビュー

2023年 難民の日 ピースウィンズの難民支援の現場から(3)

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部

6月20日は「世界難民の日(World Refugee Day)」です。UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)によると、紛争、迫害、人道危機から逃れてきた難民や避難民など、助けを必要とする支援対象者は全世界で約9470 万人。ウクライナ戦争やスーダンの治安悪化など様々な要因によってその数は増え、第二次世界大戦後、最も多い危機的な状況となっています。「世界難民の日」は苦難に立ち向かう難民・避難民への共感と理解を深め、彼らの勇気を讃える日。UNHCRが掲げる2023年のテーマは“hope away from home(難民とともに描く希望)”。世界各地で難民・避難民支援を行なってきたピースウィンズは、今どんな活動を行っているのか? そこにどんな希望があるのか? 現場から3人の声をお届けします。

 

●職業訓練で意識の変化を目の当たりにする山元めぐみ

 

──山元さんは、どこでどんな難民支援を行なっているのですか。

山元 ウガンダの首都カンパラに拠点を置いて、ウガンダ北部と西部の難民居住地区で支援活動をしています。北部には南スーダンの紛争を逃れてきた難民がいて、西部にはコンゴ民主共和国から流入した難民がいます。手洗い場の設置やトイレの建設、衛生普及活動といった給水衛生支援に加えて、両方の地区に女性支援センターを建設して、女性の自立のための職業訓練をしています。

 

 

──ウガンダはアフリカ最大の難民受け入れ国だそうですね。とても寛容な難民政策だそうですが、それはどんなものですか?

山元 ウガンダは、かつて自分たちが難民として助けてもらったから、今度は自分たちが助ける番だという意識があります。通常、難民を受け入れても「一時的」という考え方の国が多いなか、ウガンダは非常に寛容な難民政策をとっています。2013年ごろから難民の受け入れが増加したのですが、「難民キャンプ(camp)」ではなく「難民居住地区(settlement)」という言い方をします。難民がやってくると居住スペースと農作業のできる土地を借りることができます。居住地区には門もフェンスもないので、自由に出入りして、働くことができます。地域の病院や学校は、居住地区の人も地元ホストコミュニティの人も使えるようになっていて、溶け込んでいます。

 

──すごい。

山元 ですから、外部からの人道支援も、必ず3割はホストコミュニティにもメリットがあるようにするというルールがあります。ホストコミュニティとしても得るところがあるから受け入れられる部分はあるのだと思います。

 

──今年の世界難民の日のテーマは「希望」です。女性の自立支援のための職業訓練は「希望」そのものという印象を受けますが、これはどういったものですか?

山元 北部インヴェピ難民居住地区と西部チャカII難民居住地区に「女性支援センター」を建設し、昨年夏から、難民と元々その土地に住んでいたウガンダ人女性を対象に、裁縫と美容・理容トレーニング、石鹸作りなどをやってきました。(リンク:【ウガンダ】難民・ホストコミュニティの女性へ裁縫、美容・理容トレーニングを開始) 会計や識字教育など、ビジネスの基本知識のトレーニングもしています。さらに、近年、UN Womanが男女の役割分担の概念を変えようとしていることに合わせて、配電や配管、レンガ積みなど、従来「男の仕事」と思われてきたことにもトレーニングの領域を広げています。

 

 

──充実していますね。トレーニングはどのくらいの期間行われるのですか?

山元 裁縫だと半日の授業を週に5回。美容・理容だと半日の授業を週3回。これを3ヶ月半くらい受けてもらいます。最後に政府機関が管轄する試験を受けて、知識や技術を身につけたことを確認して、合格したら修了証がもらえます。この時は、みなさん本当に誇らしげです。受講した人たちの中には、すでにお店を持ったり、縫い物ができるようになって知り合いの店で働いてご贔屓さんがついたり、頑張っている人たちがたくさんいます。

 

 

──手に職をつけると自信がつきますよね。

山元 そうなんです。授業を受けている時も、みなさん生き生きしていて、それを見ている私たちまでうれしくなります。職業訓練って、技術が身についてお金を稼げるようになるということ以上に、気持ちの変化がすごく大きいと思っています。

ある女性がこんな話をしてくれました。以前は自分でお金を稼ぐことができなくて、下に見られがちだったけれど、お金を稼げるようになって夫のリスペクトが得られるようになった。また別の女性は、以前は砂糖や塩のような生活必需品を買うのにも夫の許可を得なければいけなかったけれど、自分で稼げるようになって好きに買えるようになったと話してくれました。

 

 

──大きな変化ですね。

山元 トレーニングが始まる前は、お金が稼げるようになったら「いい食事をしたい」とか話す女性もいました。もちろん、「いい食事」といってもご馳走ではなくて、「一日一食だったのを二食にしたい」とか「時々、家族のためにお肉を買いたい」というような意味合いなのですが、トレーニングが終わってみると、それ以上に、自分の存在意義を見出すというか、自分の居場所を見つけた喜びの方が大きいように見受けられます。それを見ている私たちも一緒にうれしくなってきます。

みんな本当にクリエイティブで、裁縫ができるようになると端切れで布ナプキンを作ったり、バッグや帽子を作ったりするんです。生理用品が手に入らなくて女子生徒が学校に行けなくなるなど生理の問題はとても大きいので、それを自分たちで少しでも解決できるようになることの意味も大きいと思っています。

 

 

過去には配電や配管のトレーニングも実施したのですが、最初は募集チラシを見た女性が「これは男性向けの募集かと思った」と言って自分ができるとは思っていなかった。今後もそういう新しい挑戦をするのを後押しできればと思っています。

 

──山元さんにとっても「希望」が広がりますね。

山元 格差が広がる世界で、「結果の平等」は難しいけれど、希望する人に「チャンスは平等」である社会になればいいなあと思います。男性も女性も、誰もがやりたいことに挑戦する機会が増えたらいいと思います。まずは動いてみよう、試してみようという気持ちになれるように、その後押しを続けたいと思っています。

 

WRITER
広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
国際支援や世界情勢に関わる情報をお伝えしています。本当に困っている人たちに、本当に必要な支援を届けるために、私たちにできることを一緒に考えるきっかけになればと思います。
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